『不動産フォーラム21』 今月の表紙
(公財)不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター)編集・発行(発売:(株)大成出版社)の月刊誌『不動産フォーラム21』では、2009年1月号より、表紙及び表紙裏において、特徴のある都市開発プロジェクトを取り上げています。ここでは、その内容を転載するとともに、写真の別カットなども加えてご紹介します。
『不動産フォーラム21』最新号の内容は…
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2013年6月号 あべのキューズタウン
少子高齢化、人口減少社会の本格化を受けて、コンパクトシティ※)論議が喧しい。交通弱者の高齢者はもちろん、若者も自動車を持たない層が増えてきている。そうしたなか、大型ショッピングセンター(SC)のトレンドも、従来の郊外ロードサイド型SCから、駅直結型SCへと変わりつつある。この「あべのキューズタウン」も、そのトレンドを実証するものだ。
大阪のサウスゲートである阿倍野・天王寺駅は、5駅7路線が集結し一日に約78万人の駅乗降客を有する。あべのキューズタウンは、同駅前の大阪市が主導した阿倍野再開発事業(施行区域約28ha)の集大成プロジェクトで、地権者の権利床からなる「ViaあべのWalk」と、特定建築者が運営する「あべのマーケットパークQ's MALL」で構成される。
ViaあべのWalkはアウトモールの装い、あべのマーケットパークQ's MALLはインモールの設え。両者が自然と調和したハイブリットモールは、来街者を単なる金銭消費空間ではなく、時間消費型の空間へと誘う。「トモダチの森」や「マンゲキョウの庭」など、要所ごとに仕掛けられた遊び心満載のスペースは、計画のテーマである「コミュニティとコミュニケーションの場」の形成を具現化している。
阿倍野筋に面する約300mの、ともすると単調になりがちなSCの外壁はリズミカルに分節化され、屋上の立体的なテラスや大きな円形のガラス屋根などとあいまって、来街者の時間消費への期待を遠くから高まらせる。
物件名称 : あべのキューズタウン
阿倍野A1地区第2種市街地再開発事業 A2棟
所 在 : 大阪市阿倍野区阿倍野筋1—6—1
用 途 : 物販店舗、遊技場、事務所、駐車場
竣 工 : 平成23年3月
敷地面積 : 約37,803㎡
延床面積 : 約183,730㎡
高 さ : 約44m
階 数 : 地下2階、地上6階、塔屋2階
施 行 者: 大阪市(特定建築者:東急不動産)
設 計 : 安井建築設計事務所・東急設計コンサルテント共同企業体
写真・図版・文 大場雅仁
㈱東急設計コンサルタント 執行役員 事業企画室長
(技術士・土地区画整理士・再開発プランナー)
※)コンパクトシティ : 中心部に様々な機能を集約し、市街地をコンパクトな規模に収めた都市形態、もしくはそれを目指した都市計画の総称。都市の機能を徒歩圏内に収めることで、市街地の再開発、自然環境や文化遺産の保護、地域コミュニティーの創出など、少子高齢化社会への対応を図ることを主な目的としている。類似概念として、アメリカの「ニューアーバニズム」や、イギリスの「アーバンビレッジ」などがある。
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