『不動産フォーラム21』 今月の表紙
(公財)不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター)編集・発行(発売:(株)大成出版社)の月刊誌『不動産フォーラム21』では、2009年1月号より、表紙及び表紙裏において、特徴のある都市開発プロジェクトを取り上げています。ここでは、その内容を転載するとともに、写真の別カットなども加えてご紹介します。
『不動産フォーラム21』最新号の内容は…
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2012年3月号 みなとみらいセンタービル
事業性と環境性能とデザインと安全性──。ビルがこれらを兼ね備えるのは当たり前のようでいて、実はそうたやすいことではない。おのおのがトレードオフの関係となることも多いからだ。
したがって、通常はすべてが高得点ではないものの、一つひとつが平均点を上回ることを目指すことになる。もちろん、建築主からすれば事業性の優先順位が高いことは言うまでもないが、環境性能やデザイン、あるいは震災などに対する安全性も近年、社会ニーズやテナント等からの要望により、結局は事業性と密接に結びついている。そうした意味で、このビルはそれらすべてについてハイスコアをマークしている特異な例と言えよう。
まず、白と青の縦ストライプのファサードは、「みなとみらい」らしく海を予感させつつ、外周部全体が制振装置となって働く。白(壁柱)と青(ガラス)の見付割合は日射遮蔽性能とも整合している。
また、免震+制振構造「TASMO-HD」の開発により、PML値※1)5%未満という高い安全性を確保したうえで、オフィス基準階のレンタブル比を82%まで高めていたり、豊富な空地や駅連絡通路の新設などにより、横浜市環境設計制度において250%の割増容積を獲得したりして、事業性も高めている。
さらには、中間階の採光と空調に寄与するように基準階の中央に設けたエコボイドなどが、先の環境ファサードとともに評価され、CASBEE横浜※2)のSランクと認証されている。
物件名称 : みなとみらいセンタービル
所 在 : 横浜市西区みなとみらい3−6−1
用 途 : 事務所、店舗、駐車場
竣 工 : 平成22年5 月
敷地面積 : 10,132㎡
延床面積 : 95,220㎡
階 数 : 地上21階、塔屋1 階、地下2 階
高 さ : 約98m
建 築 主 : オーディケー特定目的会社
設 計 : 大成建設一級建築士事務所
写真・図版・文 大場雅仁
㈱東急設計コンサルタント 土木設計本部開発企画部長
(技術士・土地区画整理士・再開発プランナー)
※1)PML値 : PMLはProbable Maximum Loss の頭文字で、予想される最大損失額のこと。「PML値」に統一された明確な定義はないようだが、一般には、475年に1度起こるような大規模な地震にあった場合に予想される最大の物的損失額の再調達価額に対する割合、とされている。
※2)CASBEE横浜 : 2011年7月号の本欄参照。
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