『不動産フォーラム21』 今月の表紙
(公財)不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター)編集・発行(発売:(株)大成出版社)の月刊誌『不動産フォーラム21』では、2009年1月号より、表紙及び表紙裏において、特徴のある都市開発プロジェクトを取り上げています。ここでは、その内容を転載するとともに、写真の別カットなども加えてご紹介します。
『不動産フォーラム21』最新号の内容は…
((公財)不動産流通推進センターのウェブサイトへ)
2015年5月号 ワテラス(淡路町二丁目西部地区第1 種市街地再開発事業)
この辺りが地形的に東京の山の手と下町の境目であることから、江戸時代には武家屋敷と町人街の境目であり、行き交う人で賑わっていたという。また、湯島聖堂や昌平坂学問所により近代教育発祥の地ともなり、正岡子規、夏目漱石、森鴎外などを輩出したことでも知られる。
ワテラスは、そうした地域にあって117年の歴史を誇った淡路小学校(1993年に統廃合)跡地の再開発である。周辺には明治大学や日本大学などのキャンパスがあり行き交う若者も多いが、地域住民の高齢化率は35%を超える。住む人、働く人、学ぶ人が参加する新しいコミュニティづくりがこの地区の再開発のテーマであった。
その新しいコミュニティづくりのコンセプトは三つの「WA」だという。一つ目は「和」。神田淡路町が培ってきた和の精神。二つ目は「輪」。人の輪を大切にという思い。そして三つ目は「環」。神田緑水文化というイメージのもと緑と水を環のように巡らせた、情緒豊かな環境の創造である。
三つのWAを具現化する施設は、オフィス、アトリウム※)、レジデンス、学生マンション、商業施設、コミュニティ施設(ギャラリー、ホール、イベントスペースなど)で構成される。
とりわけ36戸の学生マンションはユニークだ。周辺の相場より3割ほど安い家賃で入居可能だが、地元の祭りや火の用心のパトロールなどの地域活動への参加が義務付けられている。そうしたなかで学生と地域住民が交わり、自然と新しいコミュニティづくりが進んで行くのであろう。
物件名称 : ワテラス(淡路町二丁目西部地区第1種市街地再開発事業)
所 在 : 東京都千代田区神田淡路町2-101・103・105
主要用途 : 事務所、住宅、商業施設
竣 工 : 平成25年3月
敷地面積 : 約 10,417㎡
延床面積 : 約128,437㎡
高 さ : 約165m
階 数 : 地下3階・地上41階・塔屋1階
建 築 主 : 淡路町二丁目西部地区市街地再開発組合
設 計 : 佐藤総合計画
写真・図版・文 大場雅仁
㈱東急設計コンサルタント 執行役員 事業コンサルティング本部副本部長
(技術士・土地区画整理士・再開発プランナー)
※アトリウム : アトリウム(atrium)は、古代ローマの住宅建築で、開口部(中庭)付きの大広間を意味する。また、初期・中世キリスト教会建築では、柱廊に囲まれた中庭を指す。現代建築では、ガラスやアクリルパネルなど光を通す材質の屋根で覆われた大規模な空間のことをいう。吹き抜けになっていて、ホテルや商業施設、オフィスなどのエントランスに設けられることが多い。内部公開空地ともいう。(2011年6月号分より再録)
|